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教えて!経理部長!!やさしい業績報告 2017年5月期 第2四半期

こんにちは。ワタクシ、この春から宝印刷に入社することになりました宝子(たからこ)です。もう覚えていただきましたか?
年末に卒業論文も無事提出し、あとは卒業式を待つばかりです。
4月の入社より一足先に、3月から研修も兼ねて宝印刷でアルバイトとして働くことになりました。それまでに学生最後の思い出をたくさん作りたいと思います!

登場人物

  • 若松 宏明
    (わかまつ ひろあき)
    宝印刷(株)執行役員 経理部長
    大学卒業後、銀行マンとして営業や支店長、与信管理を経験し、2007年から宝印刷の経理部長を務める。趣味は読書、旅行、ドライブ。運動不足で体重が増えてきたのが気になる今日この頃。
  • 宝子(たからこ)
    この春から宝印刷(株)への入社が内定した大学4年生。
    趣味は旅行と映画鑑賞。家族構成は父、母、姉、猫のポチ。卒業論文も無事提出し、あとは卒業を待つばかり。卒業旅行でも行こうかな、とちょっと浮かれ気味!?

目次

  1. 第2四半期までの業績をひもとくと?
  2. 「投資事業組合」ってなに?
  3. 通期の見通しは修正?それとも据え置き?

第2四半期までの業績をひもとくと?

若松部長、今回もよろしくお願いいたします。今日は第2四半期までの業績ですね!

はい、よろしく。ではさっそくご説明しましょう。

2017年5月期第2四半期連結累計期間の業績(2016年6月1日~2016年11月30日)
2017年5月期第2四半期連結累計期間の業績

売上高は前年同期比1.7%増で、利益は0.3%減に3.0%減、だけど最終的な利益は1.8%増ですね。

実は前年同期の売上・利益は過去最高を記録したのですが、この第2四半期までの業績も売上高と親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期の過去最高を更新する結果となりました。

すごい!当社は第1四半期に売上や利益が集中すると前回伺いましたが、第1四半期に続けて第2四半期の期間も好調を維持されているのですね!

この第2四半期の3ヶ月では営業努力によるところが大きいです。
では売上高を製品別に見ていきましょうか。

製品区分別売上高の状況

  • 金融商品取引法関連製品につきましては、目論見書の売上が減少したことにより、前年同四半期比354百万円(10.7%)減少し、2,970百万円となりました。これは、主に前期に大型のIPO案件を受注したことによるものであります。
  • 会社法関連製品につきましては、株主総会招集通知の売上が増加したことにより、前年同四半期比85百万円(6.1%)増加し、1,496百万円となりました。
  • IR関連製品につきましては、事業報告書や株主総会関連サービスの売上が増加したことにより、前年同四半期比207百万円(7.8%)増加し、2,880百万円となりました。
  • その他製品につきましては、主に原稿作成コンサルティングの受注が増加したことにより、前年同四半期比205百万円(19.5%)増加し、1,259百万円となりました。

えっと、まず金融商品取引法関連製品から見ていくと、「目論見書の売上が減少したことにより…」と書いてありますね。目論見書の売上が減少したのはなぜですか?

これはね、説明にある通り、前期は大型のIPO 案件があったこと、さらにゼロ金利政策の影響で企業の資金調達方法が変わってきたことが要因です。
新規上場(IPO)や資金調達(エクイティファイナンス)が必要になると、金融商品取引法により有価証券目論見書の開示が必要になるということは前回説明したよね。

はい。覚えています!

これまでの証券市場における企業の資金調達方法は、市場に発行している株式数を増やして、その株式を購入してもらうことで資金を得ることが一般的でした。
これを増資といいますが、増資にあたって有価証券目論見書の発行が義務付けられていて、当社はこの作成のお手伝いをさせていただいています。
しかし、ゼロ金利政策の影響で金利が低下し、増資ではなく社債発行という方法で資金を調達する企業が増えてきました。

社債ってなんですか?

社債とは、簡単に言うと「企業の借用証書」のこと。いくら借りて、利息は何%でいつ返しますというのが記されたもの。つまり投資家から見れば、社債を買うということはその企業にお金を貸してあげるということなんですよ。お金を借りたら利息をつけて返すのが一般的ですが、この利息をいくらにするかの基準となる国債の利回りが、ゼロ金利政策の影響でほぼゼロになったので、お金を借りても返すときに利息をほとんどつけなくて良くなった。しかも社債の種類や規模にもよりますが、目論見書の発行がいらない場合もあるため、当社がお手伝いする機会が減少しました。それが売上にも影響したわけです。

なるほどー。ゼロ金利政策は意外なかたちで当社の売上に影響してくるんですね。
でも、会社法関連製品IR関連製品その他製品は前年同期から増加していますよね。

ええ、これは主に、企業の株主数増加により招集通知や株主通信の印刷部数が増えたことが追い風となっています。おかげで全体の売上高も親会社株主に帰属する四半期純利益もなんとかプラスに着地することができました。

よかったですね!

「投資事業組合」ってなに?

では次に財務諸表の中身を少し見てみましょうか。
損益計算書を見てごらん。前年同期と比べて数字が大きく変わっている科目はありますか?

四半期連結損益計算書
四半期連結損益計算書

そうですね…、「営業外収益」の中にある「投資事業組合運用益」というのが4,247万円から87万円に減っています!
この「投資事業組合」ってなんですか?

投資事業組合」とは、IPO(新規株式公開)をしたいが資金が足りない、という企業のために、その企業の株式の一部を保有するという形で出資をしている組合のことです。当社は複数の投資事業組合に組合員として加入し、出資しています。
出資先企業がめでたく上場という運びになると、保有していた株式の売却益が組合に入り、組合員である当社にも分配されます。
なぜ当社がこのような組合に出資しているかというと、売却益を得るためではなく、IPOを考えている企業をご紹介いただくためです。つまり未来のお客様を得るためです。
当社のお客様は上場企業だけではなく、IPOを考えている未上場企業も含まれます。しかしどこの未上場企業がIPOを考えておられるか外からはわかりません。開拓するには人からの紹介や情報が命です。そこで銀行や証券会社などの金融機関からご紹介いただくこともありますが、未上場企業を支援する投資事業組合も、開拓ルートのひとつです。
つまり、あくまで情報を得るためであってここで運用益を期待するつもりはないので、自分たちの財務力に見合った額しか出資していません。
ただ、今回はそれなりに業績に響いてしまいましたね。

なるほど、でも未来のお客様を探すためには必要な投資なのですね。

通期の見通しは修正?それとも据え置き?

1年も折り返し地点に来ると投資家から必ず聞かれるのは「通期の業績予想はどうですか?」という質問です。これなら予想を上回るぞ、と上方修正するのか、このままじゃ予想には到底及ばないな、と下方修正するのか、それとも据え置きか。

どうされるんですか?

2017年5月期の連結業績予想(2016年6月1日~2017年5月31日)
2017年5月期の連結業績予想

結論から言うと、据え置きです。
当期の最初にお知らせした業績予想を達成できるかどうかは、決して楽観視できる状況ではありません。厳しいのは事実です。しかし過去の業績傾向を鑑みると、もうひと踏ん張りすれば決して手の届かない額ではないぞ、と考えています。
もちろん、残り半年でいかにコストを削り、利益を上げるかは大きな課題です。社員ひとりひとりの頑張りにかかっています。
宝子さんも春からは当社の業績に貢献する一人になるんだから、卒業まで今のうちにやりたいことをやるのももちろんいいけど、社会人になる準備もしっかりとね!

(ドキッ)は、はい!
今日もとても勉強になりました。ありがとうございました!

おさらい

  • 企業の資金調達方法が変わって目論見書の売上低下が響いたものの、第2四半期までの業績の売上高、親会社株主に帰属する四半期純利益は過去最高を更新。
  • 「投資事業組合」への投資は、未来のお客様を獲得するためのもの。
  • 厳しい状況だが、通期の業績予想は据え置き。

「教えて!経理部長!!やさしい業績報告」

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