ウェブアクセシビリティとは?義務化の真相と具体的な対策・意識すべきポイント

Webサイトの利用しやすさを意味する、“ウェブアクセシビリティ”という概念が注目されています。多様な利用者が扱いやすいWebサイトを実現するために、ウェブアクセシビリティを意識することは重要です。しかし、ウェブアクセシビリティの義務化や具体的に取るべき対策について、疑問を持つケースもあります。本記事では、ウェブアクセシビリティについて詳細に解説します。

ウェブアクセシビリティとは

“ウェブアクセシビリティ”とは、Webサイトへのアクセシビリティ、つまりWebサイトの使いやすさを意味する概念です。障害の有無や年齢、インターネットの利用環境などに関わらず、“多様な利用者が利用しやすいWebサイト”であることが、ウェブアクセシビリティが確保された状態であると考えられます。

ウェブアクセシビリティが重要な理由

現代社会において、Webサイトは情報を集めるための必須手段であり、生活を営むうえで欠かせないインフラです。実際に総務省の発表によると、2023年時点のインターネット利用率は86.2%で、ほとんどの人が日常的にWebサイトを閲覧しています。
(※参考:総務省「令和6年版 情報通信白書」)

しかし、ウェブアクセシビリティに配慮せず作成されたWebサイトは、利用者の状況によっては必要な情報を入手できません。例えば、生活に必要なサービスの申し込み手続きができなかったり、災害時に命を守るための情報が得られなかったりするなどです。Webサイトにアクセスできる機会の平等を確保するために、ウェブアクセシビリティが重要な概念といえるでしょう。

ウェブアクセシビリティを満たす条件

ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の資料によると、次の条件を満たすWebサイトは、“ウェブアクセシビリティを達成できている”と判断できます。
(※参考:ウェブアクセシビリティ基盤委員会「JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表」

  • 知覚できる
  • 操作できる
  • 理解できる
  • 堅牢である

例えば、目が見えなくても操作方法がすぐに分かり、耳が聞こえなくても音声・動画コンテンツの内容が分かるWebサイトが該当します。このように配慮されたWebサイトであれば、さまざまな障害や困難を抱えている人でも、Webサイトを利用できます。

ウェブアクセシビリティで配慮すべき対象者

デジタル庁の資料によると、次に該当する人がウェブアクセシビリティで配慮すべき対象者です。
(※参考:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」

  • 高齢者
  • 視覚障害のある人
  • 聴覚障害のある人
  • 上肢障害のある人
  • 色覚特性のある人
  • 発達障害のある人
  • 知的障害のある人
  • 一時的に障害のある人

“一時的に障害のある人”とは、何らかの理由でWebサイト閲覧で何らかの困難が生じている、次のような人を指します。

  • 手を怪我してマウスが使えない
  • 電車内で動画を見たいがイヤホンを忘れた
  • 眼鏡を忘れて文字がよく見えない

つまり、“誰もが平等に情報を得られるWebサイト”こそが、ウェブアクセシビリティで目指す理想形です。

ウェブアクセシビリティの具体例

ウェブアクセシビリティの具体例として、次のような取り組みが挙げられます。

取り組み 効果
画像に“alt属性”を付与する スクリーンリーダーを使用して画像の内容を理解できる
色覚を調整する 一部の色を識別できない人でもテキストや画像を認識できる
動画に字幕を設定する 耳が聞こえない人でも動画コンテンツの内容を理解できる

上記のように、何らかの困難を抱えている人の立場に立って、内容を理解するための“代替手段”を用意することが、ウェブアクセシビリティの基本的な取り組みです。

ウェブアクセシビリティは「義務化」されていない

2025年12月現在、ウェブアクセシビリティは“義務化”されていませんが、次のような背景からウェブアクセシビリティに取り組む企業が増えています。

2024年に「合理的配慮の提供」が義務化された

2016年4月に障害者の雇用の促進等に関する法律が改正され、雇用の分野において“合理的な配慮の提供”が義務化されました。募集および採用時において、障害者と健常者を区別しない均等な機会を確保することが目的です。
(※参考:厚生労働省「雇用の分野で障害者に対する差別が禁止され、合理的な配慮の提供が義務となりました」

さらに、2024年には“改正障害者差別解消法”の施行により、事業者に対して合理的配慮の提供が義務化されました。合理的配慮とは、障害者が健常者と同じように社会に参加できるようにするために、それぞれの障害特性や課題に合わせて提供するサポートを意味します。
(※参考:内閣府「改正障害者差別解消法が施行されました」

例えば、バリアフリー環境の整備やコミュニケーションの工夫、柔軟な働き方の選択肢などです。ウェブアクセシビリティの確保そのものは義務化されていませんが、合理的配慮の一環として重要な施策の一つといえるでしょう

公的機関ではウェブアクセシビリティが推進されている

民間企業の場合と同じく、公的機関でもウェブアクセシビリティへの対応は義務化されていません。しかし、総務省の資料によると、公的機関のWebサイトは社会生活における重要度が高く、情報が得られないことで生命の危機など多大な不利益が発生する可能性があるため、ウェブアクセシビリティの確保が推奨されています。
(※参考:総務省「公的機関に求められる ウェブアクセシビリティ対応」

企業がウェブアクセシビリティ確保に取り組むメリット

 

企業がウェブアクセシビリティの確保に取り組むことで、次のようなメリットが期待できます。

ユーザビリティが向上する

ウェブアクセシビリティへの対応により、障害者・高齢者だけではなく、誰でも使いやすい“ユーザビリティの高いWebサイト”になります。多様なユーザーに配慮したWebサイトを構築することで信頼性が高まり、顧客の流入数や満足度の向上につながります。

SEO対策で有利になる

ウェブアクセシビリティに対応するためには、ユーザーが理解しやすいコンテンツや画像が欠かせません。ユーザビリティは検索エンジンが重視するポイントでもあるため、表示順位の改善も見込めます。つまり、ウェブアクセシビリティを意識したWebサイトは、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)にも有効といえるでしょう。

企業イメージが改善する

ウェブアクセシビリティへの取り組みは、“多様性を尊重する姿勢”のアピールにもつながります。障害や困難を抱えているユーザーに配慮し、誰もが平等にサービス利用できる環境を提供することは、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)やサステナビリティ(持続可能性)の観点からも重要です。これにより自社に対するステークホルダーの評価が改善し、中長期的な企業価値の向上につながるでしょう。

集客・売上の向上につながる

前述した“SEO対策への効果”により、Webサイトの集客数が増加します。さらに、Webサイトの導線やコンテンツの内容が分かりやすいため、ユーザーを商品・サービスの購買へスムーズに誘導しやすくなります。Webサイト運用の成果を改善するという観点からも、ウェブアクセシビリティに取り組む意義は大きいです。

採用力を強化できる

あらゆる業界で人手不足が深刻化するなか、採用力の強化は企業にとって喫緊の課題となっています。Webサイトのウェブアクセシビリティを改善することで、ダイバーシティに配慮した企業姿勢を求職者にアピールでき、多様な人材を呼び込みやすくなります。これにより企業の採用力を強化でき、中長期的な成長を支えるための基盤を構築することが可能です。

ウェブアクセシビリティを実現するための4要素

ウェブアクセシビリティ基盤委員会の資料では、誰もが利用できるWebサイトを実現するために、次のポイントを意識することが重要であることが示されています。具体的な対策も含めて解説します。
(※参考:ウェブアクセシビリティ基盤委員会「JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表(レベルA & AA)」

知覚できる

視覚・聴覚・触覚など、さまざまな方法でコンテンツを認識できることを意味します。仮にひとつの感覚に障害があったとしても、代替手段を用意してコンテンツの内容を伝えられるようにしておくことが重要です。

例えば、視覚障害者は読み上げソフトを使用するため、画像コンテンツに“alt属性”を付与しておくと、視覚の代わりに聴覚で知覚できます。また、動画コンテンツでは字幕、もしくはテキスト版を用意することで、視覚障害者と聴覚障害者の双方に対応できます。

操作できる

誰もがWebサイトを操作できなければなりません。デバイスをスムーズに操作できない人でも、キーボードや音声入力などで簡単に操作できる必要があります。例えば、キーボードのみで操作できればマウスや画面タッチが不要なため、上肢障害や腱鞘炎がある人でもWebサイトを閲覧できます。また、文字入力や画面操作に制限時間を設けないことや、画面の閃光・点滅を避けることも重要です。

理解できる

ウェブアクセシビリティを達成できているWebサイトでは、誰が閲覧しても操作方法やコンテンツ内容が理解できます。文章を分かりやすくすることはもちろん、すべてのページでレイアウトやメニュー項目を統一することが理想です。フォーム入力を求める際は、必須項目や入力ミスの箇所を明確に示し、解決策を具体的に提示することでユーザビリティが向上します。

堅牢である

あらゆる環境やデバイスからWebサイトを正しく閲覧できるようにすることで、Webサイトの堅牢性を担保できます。国際的な基準に沿ってWebサイトを設計し、HTMLやCSSを正しく取り扱うことが重要です。

CMS(Content Management System:コンテンツ管理システム)を導入することで、専門知識がなくてもWebサイトを効率的に運用しやすくなるため、堅牢なWebサイトの構築に役立ちます。

https://www.takara-print.co.jp/media/website-creation_006

ウェブアクセシビリティに取り組む方法・手順

 

ウェブアクセシビリティへの取り組みは、次のステップで進めることが一般的です。

ステップ1:準拠するガイドラインを決める

ウェブアクセシビリティを実現するためには、施策の指針となる“ガイドライン”に準拠する必要があります。ウェブアクセシビリティのガイドラインには次の3種類のものがあります。

“WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)”が提唱されてから、WCAGに準拠して国際規格の“ISO/IEC 40500”と、国内規格の“JIS X 8341-3”が制定されたという経緯があります。そのため、いずれもほとんど同じ内容であるうえに、国内の公的機関が“JIS X 8341-3”に準拠しているため、基本的には“JIS X 8341-3”を選んでおくと無難です。

ステップ2:“レベルAA”の達成を目標とする

“JIS X 8341-3”では、達成基準となる適合レベルが次の3段階で設定されています。

適合レベル 項目数(適合に必要な項目数)
A 25(25)
AA 13(38)
AAA 23(61)

AAやAAAの適合レベルを達成するためには、1つ前のレベルの項目もすべて満たす必要があります。デジタル庁のウェブアクセシビリティ導入ガイドブックでは、まず適合レベルAAを達成することを目標とし、可能であればレベルAAAの項目をいくつか満たすことが推奨されています。
(※参考:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」

そのため、ウェブアクセシビリティに取り組む場合は、まず適合レベルAとAAの計38項目の達成を目指すようにしてください。

ステップ3:ウェブアクセシビリティの試験を実施する

前述の「知覚可能」「操作可能」「理解可能」「堅牢」の4つのポイントを意識した施策を実施したあとは、Webサイトの対応度を確認するための試験を実施します。ウェブアクセシビリティ基盤委員会がガイドラインを公開しているため、チェックリストを活用してください。
(※参考:ウェブアクセシビリティ基盤委員会「JIS X 8341-3:2016 試験実施ガイドライン(達成基準チェックリストの例)

なお、総務省がウェブアクセシビリティのチェックツールである“miChecker”を提供していますが、すべてを確認できるわけではないため目視でテストすることが重要です。

ステップ4:ウェブアクセシビリティの対応度をWebサイトで公開する

ウェブアクセシビリティの試験結果をWebサイトで公開します。結果は以下のように「準拠」もしくは「一部準拠」で示します。

準拠 すべてのWebページですべての達成基準を満たしている
一部準拠 基準を満たしていないページがひとつでもある

例えば、適合レベルAの項目を満たしていないWebサイトの場合は、“適合レベルAに一部準拠”と記載します。内閣府の公式サイトのように、ウェブアクセシビリティ検証結果の具体例があるため、参考にしてください。

ステップ5:改善を繰り返して理想のWebサイトを目指す

ウェブアクセシビリティの基準を満たせないページがある場合でも、非公開化や削除は避けましょう。ウェブアクセシビリティの目的は、あくまでユーザー目線で使いやすいWebサイトにすることであり、“JIS X 8341-3”などのガイドラインを満たすことではありません。

満たせなかった項目については、課題点を把握して改善策を実施し、次回の試験までに達成できるようにしてください。“PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Act)”を回し、誰でも利用しやすいWebサイトを目指して改善を続けることが重要です。

ウェブアクセシビリティ対策は宝印刷株式会社へ!

 

ウェブアクセシビリティへの対応は義務化されていませんが、自社のWebサイトのユーザビリティや集客力の改善、ブランドイメージの向上のためにも取り組むことが重要です。まずは“レベルAA”の達成を目標にして、効果検証と改善を繰り返しながら、誰もが扱いやすいWebサイトの実現を目指してください。

ただし、ウェブアクセシビリティが優れたWebサイトの実現には、サイト設計やコンテンツ制作などの専門知識が必要になるため、プロの知見を活用することをおすすめします。

宝印刷株式会社では、企業サイトやIRサイトをはじめとするWebサイトの制作・リニューアルを承っています。法定開示情報の自動表示連携や動画コンテンツの制作など、専門性の高い分野にも対応し、企画から公開までをワンストップでご支援します。ウェブアクセシビリティへの対応についても、ベストな解決策をご提案します。Webサイト制作・CMSに関するご相談やお悩みがありましたら、お気軽にお問い合わせください。