“予算管理システム”は、予算管理に関する業務を効率化し、合理的な経営判断をサポートするためのシステムです。従来のExcel主体の業務に見られる、膨大な業務負荷や人為的ミスの改善に役立ちます。
本記事では、予算管理システムの導入メリットや選び方・比較ポイントについて分かりやすく解説します。
予算管理システムとは
予算管理システムとは、企業の予算編成からデータ分析まで一連の予算管理業務を効率化するためのITシステムです。そもそも“予算管理”とは、企業の利益目標を達成するために、予算を編成・配分し、その執行状況を管理することを指します。
予算管理業務の課題解決に役立つ
従来の予算管理では、ExcelやGoogleスプレッドシートなどを使用することが一般的ですが、次のような点が課題となっていました。
- データ集計・分析に工数がかかる
- 入力ミス・転記ミスが起きやすい
- 業務内容が属人化しやすい
予算管理は企業活動の根幹に関わるため、適切に行えない場合は誤った経営判断につながり、事業運営に混乱を招くおそれがあります。こうした課題を解決するために、予算管理システムを導入する企業が増えています。
予算管理システムの導入目的・メリット
予算管理システムの代表的な導入目的・メリットは以下のとおりです。
予算編成を効率化できる
従来のExcel運用では、各部門から提出されたデータを集約・整形・確認する作業に膨大な工数がかかります。予算管理システムでは、すべての部門で統一されたフォーマットを使用するため、作業工数を大幅に削減しながらリアルタイムのデータ収集が可能です。そのため、予算編成業務の大幅な効率化につながります。
分析精度が向上する
Excelによる予算管理では、データ抽出や加工に手作業が必要なため、分析精度とスピードに限界があります。予算管理システムでは、データの取り込みや集計を自動化できるため、予算と実績の差異を迅速に可視化できます。
また、複数パターンのシミュレーションを実施し、短時間で仮説を検証可能です。従来の手法よりデータの信頼性が向上するため、経営判断の精度を大幅に改善できます。
属人化を解消できる
Excel管理では関数やマクロの知識が必要なため、担当者の経験やスキルに依存し、業務が属人化しやすいという懸念があります。業務が属人化していると、担当者が異動したときに引き継ぎの手間がかかったり、一時的に業務が滞ったりします。予算管理システムの導入により、業務プロセスを標準化して誰でも運用できるようになるため、属人化を防ぐことが可能です。
人為的ミスを防げる
ExcelやGoogleスプレッドシートを使用した手作業による予算管理では、人為的ミスが発生するリスクがあります。例えば、計算式エラーやコピーペーストのミス、行の追加・削除による参照ずれなどです。
予算管理システムでは、計算や整合性チェックが自動的に行われるため、人為的ミスの可能性を根本的に削減できます。予算管理の精度が高まり、信頼性の高い予算管理体制を構築可能です。
セキュリティ強化につながる
Excelによる予算管理では、情報流出やデータ誤送信などのセキュリティリスクがあります。例えば、メール送信時に送信先を間違えたり、私用のUSBメモリにデータをコピーしたりするなどです。また、災害やサイバー攻撃などが発生した際は、データが喪失する恐れもあります。
予算管理システムには、データを安全に管理するためのセキュリティ機能が備わっているため、セキュリティリスクを低減できます。クラウド型の予算管理システムであれば、バックアップと災害対策も整っているため、“BCP（Business Continuity Plan：事業継続計画）”の観点からも有利です。
データドリブンな経営判断ができる
Excelベースの予算管理では、最新データを揃えるまでに時間がかかるため、判断が後手に回る傾向があります。予算管理システムを導入すると、予算と実績の差異をリアルタイムに数値情報として把握できるため、データを基にした合理的な経営判断ができます。市場環境の変化に対し迅速に対応し、競合他社より優位なポジションを築けるでしょう。
予算管理システムの種類
予算管理システムは各社からさまざまな製品が販売されていますが、主に以下の3種類に分類できます。
操作感がExcelに近いタイプ
ユーザーインターフェースがExcelに近いため、日常的にExcelを使用している担当者でも違和感なく操作できます。既存のExcelファイルを取り込み、同じレイアウトのまま予算管理業務で活用できます。既存の業務フローに大きな変更を加えずに導入できるため、現場の抵抗が少ないことがメリットです。これまでのExcelベースの業務で培ったノウハウを活かしたい企業や、新たな運用方法の定着に時間を要する企業に向いています。
分析機能に特化しているタイプ
高度なデータ分析機能と可視化機能が備わったタイプです。収集したデータを基に、予算と実績の差異分析や将来予測を行い、経営戦略の立案を支援します。大量のデータを多角的に分析して経営判断に活用したい企業や、急成長を目指すベンチャー企業に向いています。
一元管理や効率化に強いタイプ
予算管理に必要な機能が網羅されていて、情報の一元管理や効率化が得意なタイプです。社内に点在するデータの一元管理や、経営管理業務の最適化・効率化を目指す場合に向いています。ただし、製品によっては既存の業務フローを大幅に変える必要があるため、導入前にマニュアル整備や研修などの準備が必要です。
予算管理システムの代表的な機能
予算管理システムの代表的な機能は、次のとおりです。
予算計画機能
予算目標の作成と共有など、予算計画を支援してくれる機能です。部門やプロジェクト別に段階別の予算を作成したり、利益・原価・投資などのカテゴリーを細かく設定したりすることができます。複数のシナリオを用いた予算シミュレーションも可能です。
予実管理機能
予算管理システムでは、日常的にデータを収集することで、目標達成率や進捗をリアルタイムに把握できます。収集したデータの分析も行いやすいため、当初の計画と違う動きがあった場合に迅速に対応できます。会計システムなどの実績データを取り込み、予算データと一元管理することも可能です。
レポート機能
複数パターンの予算数値に加えて、予実分析やKPI予実、実績と予想値を組み合わせた着地見込など、さまざまなシミュレーション結果を出力できます。データを活用した多角的な経営判断に役立ちます。
任意区分機能
部門以外の管理体系がある場合に便利な、任意の区分を設定できる機能です。セグメント別などで数値を入力すれば、セグメント別のレポートも作成できます。例えば、プロジェクト別・サービス別・品目別などの観点からセグメント化できるため、きめ細やかな予算管理が可能です。
予算管理システムの選び方・比較ポイント
予算管理システムを選ぶ際は、次の比較ポイントを意識することで、自社に合ったシステムを選定しやすくなります。
必要な機能が搭載されているか
予算管理システムは、製品によって得意とする機能が異なります。「Excelに近い使用感」「分析機能」「データの一元管理」など、自社でどのように運用したいかを軸に検討することが大切です。そのうえで、以下のような基本的な機能が搭載されているか確認しましょう。
- 予算の作成機能
- データ取込機能
- 予実管理機能
- レポート作成機能
- データ出力機能
- シミュレーション機能
導入後に「必要な機能が不足していた」と判明すると、追加費用や別システムとの併用が必要になるため注意が必要です。
導入コスト・運用コストは適切か
導入コスト・運用コストが自社の予算内に収まるシステムを確認する必要があります。予算管理システムのコストは、導入費用（初期費用）と運用費用（利用料金）から構成されています。機能性が充実したシステムほど高額な傾向がありますが、必ずしも高いシステムが良いとは限りません。
システム導入で得られる業務効率・経営判断の改善などのメリットと、システム運用にかかるコストを検討し、投資対効果を見極めることが大切です。
操作方法が分かりやすいか
どれだけ機能性が優れた予算管理システムであっても、操作方法が分かりづらいものは現場に浸透せず、十分な導入効果が得られません。直感的に操作でき、最小限の研修で定着するシステムが理想的です。
特に、予算の作成・修正やデータの閲覧などの操作は、誰でも迷わずできる必要があります。無料トライアルが利用できる予算管理システムであれば、事前に操作感をチェックできるので安心です。
サポート体制が充実しているか
予算管理システムの導入後に不明点やトラブルが発生したとき、スムーズな対応が得られなければ予算管理業務が停滞してしまいます。分かりやすい操作マニュアルやFAQの提供、電話・メールでの問い合わせ対応に加えて、障害発生時の緊急対応などのサポート体制が整っているシステムを選ぶことが大切です。
Excel運用からスムーズに移行できるか
従来のExcel運用から移行しやすい予算管理システムなら、導入後の社内定着がスムーズに進みます。Excelファイルを直接インポートできる機能があれば、再入力の手間がかからないため、これまで蓄積されたデータも効率的に活用できます。Excelとの互換性が低い場合は、導入時の作業コストが高くなるため注意が必要です。
複数パターンのシミュレーションができるか
シミュレーション機能は、適切な予算編成を行うために便利な機能です。さまざまな角度から、複数パターンのシミュレーションができる予算管理システムであれば、精度の高い予算を編成できます。
各種会計基準に準拠しているか
予算管理システムで作成される予算データは、決算時に作成する財務諸表の形式に則ったものになります。ただし、会計基準の違いにより、予算の記載内容や計上方法が異なる場合があります。会計基準には、日本会計基準（J-GAAP）や国際会計基準（IFRS）などの種類があるため、自社が必要とする会計基準に準拠しているシステムを選ぶことが大切です。
予算管理システムを導入する手順・ステップ
予算管理システムの導入は、次の4つのステップで行うことが一般的です。
ステップ1：予算管理システムを選定する
まずは自社に最適な予算管理システムを選定します。必要な機能を洗い出し、トータルコストが予算内に収まるシステムを選ぶことが重要です。経営陣の独断ではなく、現場の担当者の意見も反映することで、導入後の運用がスムーズに進みます。無料トライアルが利用できる場合は、積極的に活用して使用感を確認しておくと、ミスマッチのリスクを減らせます。
ステップ2：導入計画を立案する
具体的な導入計画を策定します。予算管理システムの導入目的を明確化し、経営陣と各部門で認識のすり合わせを行ったうえで、無理のない導入スケジュールを設定します。導入効果を評価するために、「予算編成時間を3割削減する」「月次決算の締め日を3日短縮する」など、具体的な数値目標も設定します。
ステップ3：社内トレーニングを行う
導入前に社内トレーニングを行うことで、現場に定着しやすくなります。必要な機能は誰でもすぐ操作できるように、マニュアルを整備しておくと効果的です。トレーニング期間を短縮するためにも、扱いやすい予算管理システムを選ぶ必要があります。
ステップ4：導入して運用・改善を続ける
予算管理システムの導入後は、定期的にアンケートやヒアリングを行い、システム運用の課題点を把握します。システムの導入には既存の業務フローの変更が必要なため、すぐに社内に定着して有効活用できるわけではありません。PDCAサイクル（Plan、Do、Check、Act）を回しながら改善を続け、システムの導入効果を高めていきます。
予算管理システムの導入は宝印刷株式会社にご相談ください
予算管理システムを導入することで、煩雑な業務を効率化し、人為的ミスの発生リスクを軽減できます。システムを選定する際は、機能性とコストのバランスや扱いやすさ、Excelとの互換性などの点から選ぶことが大切です。スピーディーで精度の高い予算管理を実現するために、予算管理システムの導入をご検討ください。
宝印刷株式会社が提供する“WizLabo Budget”は、クラウドベースのプラットフォームと豊富な機能で、予算管理をはじめとする管理会計を効率的にサポートします。各部門からのデータ収集はWeb上での簡単入力で完結し、集計作業も自動化されるため、従来の手作業を大幅に削減できます。
さらに、“WizLabo Budget”で作成した予算データは、上位プランである “WizLabo” とのシームレスなデータ連携が可能です。部門横断的なデータ管理と分析を実現し、より高度な経営判断を支援します。予算管理の効率化やデータ活用でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
監修：宝印刷株式会社 ICT営業部 ICTプロダクト推進課
