会計の場面で使用される“配賦”は、企業経営に不可欠な概念です。予算やコストを適切に管理するために、配賦の仕組みを適切に理解することが欠かせません。しかし、配賦の重要性や具体的な活用方法など、不明な点が生じる場合も少なくありません。本記事では、配賦の意味とメリット、具体的な実施手順について解説します。
配賦とは

“配賦(はいふ)”とは、リソースやコストを複数の対象に分配することです。製品・サービスを生産するコストを求める“原価計算”においては、複数の部門・製品に共通してかかる間接費用を、一定の基準に沿って割り振ることを意味します。
経費や人件費は、単一の部門・製品のみ対象となるものもありますが、多くは複数の部門・製品にまたがって発生します。配賦を行うことでコスト構造を明確化でき、各部門に適切な費用を割り当てることが可能です。
配賦の目的
配賦を行う主な目的は次の2つです。
- 各部門の費用負担を実態に合わせること
- 各部門に利益・コストを意識させること
複数の部門にまたがるコストは、実態に即した割合で配分されなければ、原価構造を正確に算出できません。そのため、一定の基準に沿って配賦を行い、各部門の費用負担を調整します。その過程で、各部門に当事者意識を持って利益・コストを管理する習慣が根付くため、利益率・生産性を高める方法を検討しやすくなるでしょう。
企業が配賦を行うメリット

配賦を行うことで、企業は次のようなメリットが得られます。
原価計算の精度が高まる
配賦を行うことで、企業は製品・サービスごとのコストを正確に算出しやすくなります。多くの業界では、材料費・労務費・外注費などの直接費用だけではなく、オフィスの賃料や光熱費などの経費も発生します。このように製品・プロジェクトに直接結びつかない、あるいは複数にまたがる共通コストである“間接費用”が発生する場合、実態を反映したコスト配分により原価計算の精度が向上します。
例えば、製品Aと製品Bを生産している企業の場合、直接的な材料費や労務費はそのまま割り当て可能です。しかし、工場の光熱費や管理費などの間接費用は、生産量や稼働時間などの基準に応じて配賦しなければなりません。工場の光熱費が10万円で製品Aの生産量が6割を占める場合、6万円を製品Aの光熱費として配賦します。これにより、製品Aと製品Bの正確な原価を計算でき、両者の実際の利益率も把握できます。
適切な利益管理が行いやすい
配賦を行うことで経費が製品・サービス・部門ごとに割り当てられるため、それぞれが実際にかけているコストを正確に把握しやすくなります。利益率が低い製品や部門に対して適切な対策を講じるなど、戦略的な意思決定が可能になります。
例えば、製品Aと比べて製品Bに割り当てられる間接費が高すぎる場合は、作業フローや工数を見直すことで利益率を改善できるかもしれません。配賦により、限られた経営資源を効率的に運用できるようになるため、企業全体の収益向上にもつながります。
各部門のコスト意識が高まる
配賦が適切に行われていなければ、各部門が消費する間接費が曖昧になるため、直接費以外のコスト削減に対する意識が薄れます。しかし、配賦により部門ごとのコストを可視化できれば、それぞれが利益を改善するための対策を講じやすくなります。例えば、ある部門の光熱費や管理費が高い場合は、業務効率化や残業の削減などで利益率を改善できるかもしれません。
市場変化に対応しやすくなる
市場環境の変化に対応するためには、限られた経営資源をいかに活用するかが重要です。適切な配賦とコスト管理を行うことで、必要に応じてコストを調整できます。例えば、競争が激化している市場で企業が新製品を投入する際は、研究開発費やマーケティング費用に配賦を適用することで、売上に与える影響を事前に予測可能です。
原材料費や労務費など、外部要因による変動が大きいコストも、配賦を通じて早期に把握できます。例えば、原材料費の価格が急激に上昇した場合、その影響を製品ごとのコストに反映させることで、価格設定や生産計画を調整して競合他社より優位に立てます。企業の競争力を維持・強化するためにも、適切な配賦によるコスト管理が欠かせません。
配賦基準の種類

配賦基準には次の2種類があるため、目的に応じて使い分けることが重要です。
部門別配賦
社内の部門を“間接部門”と“直接部門”の2種類に分類し、間接部門で発生した費用を直接部門に配賦します。例えば、経理部門で発生したコストを、製造部や販売部に配賦するなどです。部門別配賦は、さらに次の3つの方法に分けられます。
直接配賦法
間接部門で発生した間接費について、すべて直接部門に割り当てる手法です。例えば、間接部門A・間接部門B・直接部門A・直接部門Bがある場合、間接部門Aと間接部門Bの間接費すべてを、直接部門A・直接部門Bに一定割合ずつ割り当てます。間接部門には配賦しないため、計算がシンプルで分かりやすく、複雑な計算を行う必要がありません。ただし、間接部門同士のやり取りが無視されるため、製造の実態を把握しにくいことが難点です。
階梯式配賦法
“階梯式(かいていしき)配賦法”は、間接部門の間接費について、ほかの間接部門も含めて優先度の高い部門から配賦する手法です。例えば、間接部門Aの間接費を直接部門A・直接部門Bに、間接部門Bは間接部門A・直接部門A・直接部門Bに、それぞれ配賦するなどです。
配賦する優先順位は、他部門へのサービス提供数やコストの合計額などが基準となります。間接部門同士のやり取りも考慮されるため、経費の優先順位が分かりやすい場合に適用すると、全体のコスト構造が分かりやすくなります。ただし、直接配賦法よりも計算が複雑になることがデメリットです。
相互配賦法
間接部門の費用を一次配賦と二次配賦の2段階に分けて、各部門に配賦する手法です。まずは一次配賦ですべての部門に配賦し、一次配賦で間接部門に分配された経費を二次配賦で直接部門に配賦します。直接部門と間接部門が明確に分かれている企業に適しており、コストを正確に把握しやすい一方で、複雑な計算が必要となるため難易度が高くなります。
製品別配賦
製造過程で発生するコストを直接費と間接費の2つに分けて、配賦率に基づいて間接費を各製品に配賦する手法です。配賦率は関与する従業員数や作業工数・稼働時間などが基本となります。製品ごとに間接費を管理できるため、部門別配賦と比べて計算がシンプルとなり、配賦の効率化が可能です。製品別に利益やコストを管理している企業に適しています。
配賦を実施する方法・流れ
企業が実際に配賦を行う際は、以下の手順に沿って進めることが一般的です。
ステップ1:配賦基準を決める
“配賦基準”は、どのような基準に基づいて間接費を各部門や製品に配分するかを決めるものです。代表的な配賦基準は次のとおりで、自社の業態に合った配賦基準を設定することで、より正確な原価計算ができます。
- 売上高
- 作業工数
- 稼働時間
- 生産量
例えば、製造部門の稼働時間が他部門より長い場合は、製造部門に多くの間接費を配賦します。配賦基準の選定は、企業の経営戦略や業務内容に依存しますが、各部門の実態を把握したうえで公平に配賦することが重要です。また、複雑すぎる基準は担当者の負担が大きくなるため、運用に支障がないようにする必要があります。
ステップ2:配賦率を算出する
配賦基準を設定したあとは、各部門や製品にどれくらいの間接費を割り当てるかを決めます。この割合を“配賦率”と呼び、例えば3つの部門に稼働時間を基準として配賦する場合、次のようになります。
| 稼働時間 | 配賦率 | |
| 部門A | 550時間 | 55% |
| 部門B | 250時間 | 25% |
| 部門C | 200時間 | 20% |
前述のステップで決定した配賦基準に従って、全体を100%として適切に割り当てる必要があります。
ステップ3:配賦額を算出する
配賦率を求めたあとは、間接費の総額に各部門の配賦率を掛けて、それぞれに割り当てる“配賦額”を算出します。先ほどの例で間接費の総額が800万円の場合は、次のような配賦額となります。
| 稼働時間 | 配賦率 | 配賦額 |
|
| 部門A | 550時間 | 55% | 440万円 |
| 部門B | 250時間 | 25% | 200万円 |
| 部門C | 200時間 | 20% | 160万円 |
適切な配賦基準と配賦率を設定しておくことで、業務の実態を反映した配賦額を算出できます。
配賦の課題・注意点

配賦を実施する際は、次のような課題点に注意が必要です。
配賦基準の設定が難しい
配賦は企業内で発生する間接費を各部門に割り当てる作業ですが、その配賦基準の設定が難しいケースが多いです。何を基準とするかは業種や業態によって異なりますが、配賦基準が不適切な場合は正確な原価を把握できず、誤った経営判断や部門間の不公平感の原因となります。
一般的には、売上高や稼働時間などが基準になりますが、実際には間接費用が部門・製品とどのように関係するかは曖昧な場合も多いです。どの基準が最も適切かを判断するためには、データ収集・分析や試行錯誤が欠かせません。
社内の合意形成が欠かせない
配賦基準が決定したとしても、間接費の配賦はどうしても部門間で不公平感が生まれやすく、社内で不満や対立が起きる原因になることがあります。そのため、十分な合意形成を得てから配賦を行うことが重要です。
各部門はそれぞれ有利な配賦基準を求めるため、透明性を担保しながら設定する必要があります。経営層が中立的な立場から配賦基準を調整し、最終的に全社的に納得のいく形で合意を得ることが求められます。
業務の効率化が必要になる
配賦作業は膨大なデータの集計や分析を伴うため、Excelなどで手作業で行う場合は膨大な工数がかかり、人為的ミスの発生リスクも高まります。大規模な組織では部門数が多く、配賦対象となる間接費の種類や配賦基準も複雑になるため、効率的な業務プロセスが欠かせません。予算管理システムなどを導入してIT化することで、作業工数とミスを大幅に削減できます。経営陣は常に正確なコスト情報を把握できるため、迅速な意思決定が行えるようになります。
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予算管理において配賦を実施することで、原価計算の精度が高まり、市場変化に対応しやすくなります。ただし、不適切な配賦は経営の混乱につながるリスクがあるため、現場の実態に即した配賦基準を設定したうえで、システムの導入で効率化することが重要です。
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