統合報告書の新しい潮流とは?フルパッケージ型と投資家特化型の違いを解説

企業の長期的な価値創造を伝える情報開示ツールとして、統合報告書の重要性は年々高まっています。発行企業数は1,200社を超え、上場企業を中心に一般的な開示媒体として定着しつつあります。

統合報告書は、財務情報と非財務情報を統合し、企業がどのように価値を創造し、どのような成長を目指しているのかを示すレポートです。有価証券報告書やCSRレポートとは異なり、企業のビジネスモデル、戦略、ESGへの取り組み、ガバナンスなどを一体的に伝える点に特徴があります。

近年は、統合報告書の構成や編集方針にも変化が見られます。従来から主流である、幅広いステークホルダーに向けて多様な情報を盛り込む「フルパッケージ型」に加え、機関投資家との対話を重視し、必要な論点に絞って構成するスタイルも注目されるようになっています。

本記事では、フルパッケージ型統合報告書の価値を確認しながら、近年見られる新しい方向性と、統合報告書づくりの最初の一歩として考えたい新たな選択肢について解説します。

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統合報告書の主流はフルパッケージ型

現在、多くの企業が採用しているのが、幅広い情報を盛り込むフルパッケージ型の統合報告書です。

このタイプの統合報告書は、財務情報に加えて、ESG、ガバナンス、事業戦略、人的資本、リスクマネジメントなど、企業価値に関わる幅広いテーマを総合的に扱います。企業の全体像を深く理解できる資料であるため、統合報告書の代表的な編集スタイルとして実績が多くあります。

また、読者はいわゆる「投資家」だけに限りません。実際には、次のようなさまざまなステークホルダーに参照されています。

  • 機関投資家
  • 個人投資家
  • 取引先企業
  • 提携先企業
  • 従業員
  • 採用候補者

このように、フルパッケージ型の統合報告書は、企業理解を深めるための包括的な情報ライブラリとして機能します。幅広い関係者に対して、自社の価値創造ストーリーや経営の考え方を伝えられる点は、大きな強みです。

フルパッケージ型が求められてきた背景

統合報告書のページ数が増加している背景には、企業に求められる情報開示の範囲が広がってきたことがあります。

近年は、環境・社会・ガバナンスに関する説明に加え、人的資本、DX戦略、サステナビリティ方針など、企業価値に関わるテーマが拡大しています。その結果、統合報告書には次のような多様な情報が掲載されるようになりました。

  • 経営戦略
  • ビジネスモデル
  • ESG・サステナビリティ
  • 人的資本
  • リスクマネジメント
  • ガバナンス
  • 財務情報

これらを一冊に集約することで、企業価値を多面的に伝えられる点は、フルパッケージ型ならではの魅力です。情報が充実した統合報告書は、投資家だけでなく、多様なステークホルダーにとっても有益な情報源になります。

一方で、情報量が増えるほど、制作側には企画、整理、執筆、確認の負担がかかりやすくなります。また、初めて統合報告書づくりに取り組む企業にとっては、どこから手を付けるべきかが見えにくくなることもあります。

近年注目される「絞って伝える」考え方

こうした状況の中で、近年注目されているのが、主たる読者を明確にし、その読者にとって重要度の高い情報に絞って構成する考え方です。

統合報告書は本来、企業の長期的な価値創造ストーリーを市場に伝え、投資家との建設的な対話につなげる役割も担っています。そのため近年は、あらゆる情報を一度に盛り込むのではなく、まずは伝えるべき論点を整理し、必要な情報から発信するスタイルも広がっています。

例えば、次のような編集方針です。

  • 想定読者を機関投資家やセルサイドアナリストに設定する
  • 投資判断に資する情報を中心に構成する
  • 目次や編集方針で読みどころを明示する
  • 詳細情報は他の開示媒体と連携し、本体は要点に絞る

フルパッケージ型の作成に求められる編集工数の捻出が難しい場合、統合報告書の目的や自社の体制に応じて業務設計を考えるのは、目標にアプローチするための適切なステップと考えられます。

統合報告書づくりで大切なのは「最初の一歩」をどう踏み出すか

統合報告書は任意開示資料であり、企業がどのような目的で発行するかによって、最適な構成は変わります。

もちろん、幅広いステークホルダーに向けて企業全体を総合的に伝えるフルパッケージ型は、非常に価値の高い開示手法です。一方で、統合報告書づくりに初めて取り組む企業にとっては、最初からフルパッケージ型での制作を目指すことが高いハードルになることが多くあります。

そのようなときに重要なのは、最初から完璧な網羅性を求めるのではなく、本当に必要な最小限のコンテンツでまずは発信を始めることです。

統合報告書は、一度ですべてを完成させるものではなく、毎年の制度開示や投資家との対話を重ねながら磨き上げていくものです。だからこそ、第一歩としては、自社として今伝えるべき中核的な情報を整理し、それを市場に向けて発信することに大きな意味があります。

まずは必要最小限の内容で対話の土台をつくり、その後に充実化していく。この考え方は、はじめての統合報告書づくりを現実的に進めるうえで効率的です。

フルパッケージ型と投資家向け特化型の違い

統合報告書のスタイルは、大きく分けると次の2つに整理できます。

観点 フルパッケージ型 機関投資家向け特化型
想定読者 マルチステークホルダー 機関投資家やセルサイドアナリスト
情報量 幅広く網羅的 必要な論点に絞る
ページ数 60〜120ページ程度 20〜30ページ程度
内容 ESG・事業・人的資本など幅広い 投資判断に資する情報を中心に構成
特長 多様な読者に対応しやすい 企業価値につながる論点を整理しやすい
留意点 全体設計や制作工数が大きくなりやすい 主対象読者を明確に定める必要がある

フルパッケージ型は、企業理解を深めてもらうための包括的な開示媒体として大きな価値があります。一方、投資家向け特化型は、まず対話の軸となる論点を明確にしたい場合に適したスタイルです。

重要なのは、どちらか一方を優劣で捉えることではなく、自社の目的や開示フェーズに応じて選ぶことです。

最初の一歩を支援する「エッセンシャル統合報告書」

統合報告書の必要性やツールとしての価値は感じていても、「何から始めればよいかわからない」「最初からフルパッケージ型を作るのは、当社には負担が大きい」と感じる企業は少なくありません。

そのような企業にとって、最初の一歩として適した選択肢の一つが、必要な情報を厳選してまとめる「エッセンシャル統合報告書」です。

宝印刷では、機関投資家の投資判断に資する情報に焦点を当てた「エッセンシャル統合報告書」を提供し、市場との対話を始めるために、次のような考え方を重視した制作スタイルをコンセプトとして提示しています。

  • 市場評価(PBR・PER・株価推移)を起点に企業価値ストーリーを整理する
  • 財務成果、事業戦略、ガバナンスを一本の流れとして接続する
  • 情報を約20ページに凝縮し、必要な論点を明確に伝える

統合報告書作成の最初の一歩を踏み出すのであれば、まずは本当に必要な最小限のコンテンツで発信することが大切です。その意味で、エッセンシャル統合報告書は、統合報告書づくりをこれから始める企業にとって適した、新たな選択肢となるでしょう。

まとめ

フルパッケージ型統合報告書は、幅広い情報を通じて企業の全体像を伝えられる、価値の高い開示手法であり、強力なIRツールとなります。一方で、統合報告書づくりをこれから始める企業にとっては、最初からすべてを盛り込もうとするよりも、まずは必要最小限の内容で作成を始めることが、「統合報告書を生み出す」という目的に対しては現実的です。

その第一歩として、投資家との対話に必要な論点を整理して伝えるエッセンシャル統合報告書は、有力な選択肢の一つです。まずは小さく始め、対話を通じて育てていくという考え方は、これから統合報告書に取り組む企業にとって重要な視点になるでしょう。

宝印刷の「エッセンシャル統合報告書」では、投資家との対話に必要な情報にフォーカスし、約20ページに凝縮した形での情報発信を支援しています。

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