「IR担当者の仕事は、決算資料や適時開示を作成すること」
以前のIR業務に対しては、そのようなイメージを持たれていた方も多いのではないでしょうか。しかし現在のIR業務には、企業価値向上に向けた戦略的な情報発信や、投資家と経営をつなぐ役割が強く求められています。
こうしたIR担当者に求められる役割の変化を踏まえ、宝印刷株式会社は『IR担当の仕事術 資本市場と経営陣の信頼を得る全手法』の出版を記念した特別セミナーを開催しました。
本セミナーでは、株式会社東京証券取引所 上場部 上場会社サポートグループ統括課長 二出川 聡氏による基調講演に加え、本書の著者である神山 光による講演、さらに株式会社宝印刷D&IR研究所 取締役 IR/サステナビリティ研究室 室長(兼 東京都東村山市市政アドバイザー)の片桐 さつきを交えたパネルディスカッションを実施しました。
会場に多数お集まりいただいたIRご担当者の皆様からの視線がステージに注がれる中、IR活動の本質や、これからの実務担当者に求められる視点について、多面的にアイデアが展開されました。
本記事では、当日の内容を振り返りながら、IR担当者がこれから押さえておきたい実務のポイントをご紹介します。
【開会のご挨拶】IRの実務担当者に寄り添える存在へ──

セミナーの冒頭では、宝印刷株式会社 代表取締役社長 白井 恒太が開会のあいさつを行いました。
白井は、セミナーに定員を超える多くの申し込みがあり、IRご担当者様の実務課題を解決するヒントがまとめられた『IR担当の仕事術』に対する関心の高さを実感。同時に、これまで宝印刷が提供してきた統合報告書や総会関連書類の作成支援に加え、IR担当者の実務そのものを支援したいという想いが、より一層強くなったと述べました。
そして、「ひとりIR」という言葉に象徴される、限られた人数で多くの役割を担い、孤独や課題を抱えながら実務に取り組むIR担当者に寄り添える存在となるべく、新たなサービスや情報提供を行い、IR担当者のお役に立てるコミュニティづくりにも取り組んでいく考えを示唆。宝印刷の新たな方向性が感じられるオープニングとなりました。
東証が語る「IR活動は企業価値向上のための経営活動」

基調講演では、東京証券取引所の二出川氏が、IR活動の本質について講演を行いました。
冒頭で二出川氏は、「IR体制の整備は義務だから行うものではなく、企業にとって多くのメリットがある活動として捉えてほしい」と語ります。
投資家との対話は、自社の説明をする場という印象が強いかもしれません。しかし実際には、投資家は多くの企業を比較・分析しているからこそ、経営課題を見つめ直すヒントを得られる貴重な機会でもあると紹介しました。
特に印象的だったのは、「IRは一方的な説明ではなく、双方向のコミュニケーションである」という考え方です。
海外投資家からは、「日本企業はもっと質問してほしい」「成長戦略を共有し、一緒に議論したい」といった声も寄せられていると紹介されました。「投資家に質問した会社には注目度を上げる」など、逆説的にほとんど対話が実施されていないという実情が衝撃的でした。
また、積極的な情報開示は株価形成にも好影響を与えることにも言及。企業の将来像を丁寧に発信することで不透明感が解消され、市場から適正な評価を得やすくなると解説しました。
さらに、IR活動を積極的に推進している企業の事例を紹介。投資家との対話を経営改善につなげる姿勢や、開示内容の充実、フィードバックを経営へ反映する仕組みなど、多くの実践例が共有されました。
講演を通じて強く感じられたのは、IR担当者は情報を届けるだけでなく、市場の声を経営へ届ける「橋渡し役」であるということでした。
「IRの孤独」を突破するために──神山が語る実務の本質

続いて、『IR担当の仕事術』の著者である神山が、「IRの孤独突破法」をテーマに講演しました。
神山は、日本に約1万人しか存在しない特殊な職種であるIR担当者の孤独の背景には、重い開示責任、社内の理解不足、属人化、相談できる上司の不在など、構造的な課題があると説明しました。
しかし、神山は「孤独は弱さではない」と語ります。
IR担当者は「会社の今と未来を背負い、資本市場と会社の間を取り持つ企業の全権大使」であるという言葉が印象的でした。
IRの役割は、各部署から集まった情報をそのまま開示することではありません。経営戦略や事業内容、財務情報、非財務情報を一つのストーリーへと整理し、企業価値として市場へ届けることにあります。
では、社内をどう巻き込めばよいのでしょうか。
神山は、「IRの仕事を理解してもらおうと説明するだけでは人は動かない」と指摘します。重要なのは、IR担当者自身が他部署の課題解決へ貢献し、「IRが自分や組織に貢献していると」と感じてもらうことだと語りました。
例えば、投資家から得た事業の評価や競合のストーリーを、営業部門へ届ければ営業トークの改善につながります。経営企画へ市場コンセンサスを共有すれば実情とのギャップ分析が進みます。経理部門には、早急に投資家視点での決算分析を提供することも助けになります。
つまり、IRは情報を受け取る部署ではなく、「市場との対話によって取得した情報を社内に循環させる部署」になるべきだという考え方です。
さらに神山は、IR担当者が持つ「文章力」も大きな武器になると紹介しました。複数の情報を一つのストーリーへまとめる能力は他部署の業務にも望まれる専門性であり、惜しみなく提供することが組織貢献と、信頼関係づくりにもつながると述べました。
パネルディスカッション──IRとサステナビリティをどう企業価値へ結び付けるか

後半のパネルディスカッションでは、二出川氏、神山に加え、宝印刷D&IR研究所の片桐が登壇し、「これからのIR担当者に求められる役割」をテーマに議論が行われました。
片桐は、サステナビリティ情報開示もIR活動と同様に、社内のさまざまな部署から情報を集約し、一つのストーリーとして発信することが重要だと強調しました。
特に印象的だったのは、「統合報告書を作ることが目的ではない」という言葉です。重要なのは、制作過程で各部門が議論し、企業の価値創造を共有することにあります。
また、SSBJ基準への対応についても、完璧な開示を目指すのではなく、社内で議論できる体制づくりから始めることが重要であるとの考えが示されました。
さらに、IR活動のKPIについても議論され、神山からは「1日あたりの売買代金」といった具体的な流動性指標や、「投資家からフィードバックを得られた割合」をKPIとして設定する考え方が紹介されました。
IR活動を単なる開示業務ではなく、企業価値向上につながる経営活動として評価する視点は、多くの参加者にとって新たな気づきになったのではないでしょうか。
宝印刷は、企業と市場をつなぐIR担当者の未来をサポートします
本セミナーを通じて一貫して語られていたのは、「IR担当者は企業価値向上を支える存在である」ということでした。
投資家との対話から市場の声を受け取り、それを経営・社内に届ける。社内へのIRの価値発揮を進めることで、各部門の協力をえて、IRが開示業務の変化の起点となっていく。その積み重ねが、企業への適正な評価につながり、ひいては企業価値向上へと結びつきます。
企業と資本市場をつなぐ「大使」として、社内外のコミュニケーションをリードしていくことこそ、これからのIR担当者に求められる役割です。
宝印刷は、統合報告書や決算説明会資料等の作成支援業務はもちろん、IR担当者の実務と企業価値向上を支援する情報発信やサービスの提供を続けてまいります。ぜひご期待ください。
お知らせ
◆セミナー配信(アーカイブ)
https://takara-print.smktg.jp/public/seminar/view/5502
申込締切:7月22日(水) 9:00まで
※本セミナーへの未上場企業および同業の方々のお申込みはご遠慮ください。お申込みいただいても、後日お断りのご連絡をさせていただく場合がございます。
◆書籍のご案内

『IR担当の仕事術 資本市場と経営陣の信頼を得る全手法』
出版社:中央経済社
編著者:神山 光 著者:片桐 さつき
内容:投資家と開示に向き合うIR担当者向けに「実務を掌握し、開示に全社を巻き込むノウハウ」を軸にご提案する、実務者必携の一冊。特に、日本の上場企業では大半を占める「ひとりIR担当」のサポートにフォーカスし、いかに会社組織に根付き地位を確立するか、さらにひとりIRからチームの組成に挑むためのメソッドまで、多様なIR経験に基づく幅広いノウハウを提供。全国の書店で販売中。